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2024.07.23
KNOWLEDGE

ゲームアプリにおける費用対効果を最大化するデータサイエンス

アプリマーケティングを支援するアプリ計測・分析ツールとして世界中のマーケッターから高い評価を受けているAdjust。2024年7月18日に開催されたアプリマーケティングカンファレンス『Adjust Ignite Tokyo 2024』では、アプリマーケットの最前線で何が起きているのか、業界を代表するトップリーダーたちが参加するセッションが開かれました。 そのなかのひとつ、『【2024年度版】ゲームアプリが未来に向けて取り組む、クロスボーダーのマーケティングプロモーションとデータ戦略』に、株式会社ルーデル 執行役員 ソーシャルゲーム事業本部 データサイエンス部部長の吉永辰哉さんが登壇しました。当記事では吉永さんの発言を中心にセッションの内容をお届けします。

吉永 辰哉

よしなが たつや

株式会社ルーデル 執行役員 ソーシャルゲーム事業本部 データサイエンス部 部長

ソーシャルゲーム事業本部データサイエンス部でデータ分析業務を担当。データドリブンなゲーム運営の実現を目指すことがミッション。最近では大規模言語モデル(LLM)を活用したサービス向上や業務効率化にも取り組んでいる。

巨大化、多様化するゲームのグローバル市場

本セッションのパネリストは、吉永さんの他、株式会社WFS マーケティング部 副部長の加藤耕輔氏、株式会社MOTTO 代表取締役の佐藤基氏、Adjust Enterprise Customer Success Managerの山根竜二氏の4人。ゲームアプリの市場は国内で約1.5兆円、グローバルでは約11兆円、スマホ以外のPCやコンソールなどのデバイスを含めると約20兆円という巨大なものだけに、この日のセッションのなかでも特に注目度の高いものとなりました。
それぞれのパネリストが自身の領域でお話するなか、吉永さんは専門であるデータサイエンスがいかにアプリマーケティングに貢献しているか、大人気ゲーム『ブルーロック Project: World Champion』(以下、ブルーロックPWC)を例に説明しました。

セッション冒頭、モデレーターを務める佐藤氏がトピックとして挙げたのが「アプリゲームにおける課題」。日本でアプリゲームのビジネスが本格的に始まったのは2012年。スマホアプリの普及とともに成長してきたゲームアプリ市場ですが、最近はとくにグローバル市場が拡大傾向にあり、それにともなってゲーム自体の多様化やマーケティングの多様化、人材の多様化といった課題が生じています。 

こうしたゲーム業界の現況や課題を踏まえて吉永さんがキーワードとして挙げたのが「費用対効果の最大化」でした。

「費用対効果をどう最大化するか。マーケティングのチャネルが多様化している中で、どれを選べば費用対効果を最大化できるかの判断が非常に難しくなっています。試してみるというのは大切なことだとは思いますが、どの程度の効果があったのかも確認しておく必要があると考えています」(吉永さん)

ゲーム運営に必要なデータをあらゆる角度から可視化する

吉永さんはこの「費用対効果」をマーケティングだけの問題とは捉えず、サービス(ゲーム)の中身や入口の部分を含め、いかにして「最大化」していくかが自分たちの課題と考えています。

「まず前提として大切なことは、広告費用を最低限回収すること。この点さえクリアしていれば基本的にはそのマーケティング活動はプラスになります。また、マーケティング効果の最大化をはかるためには獲得したお客様(プレーヤー)にちゃんと定着してもらえるかどうかも重要になってきます。せっかくバケツに水を注いでも穴が空いていたら効率が悪い。穴が空いているとしたらどこにいくつ空いているのか、どれだけ水が漏れているのか、定量的にデータで可視化することが重要なポイントになってきます」(吉永さん)

そこでルーデルがとっているのが、「ゲーム運営に必要なデータをあらゆる角度からBIダッシュボードで可視化し、そのデータ分析をベースとした事業運営」です。
こうしたデータは、基本的な指標はもちろん、広告費用対効果や新規ユーザーに関するKPIも確認しており、チュートリアルのクリア状況やメインコンテンツのプレイ状況なども細かく可視化されており、ゲームの関係者全員がブラウザ上でいつでも見られるようになっています。

「タイムリーに確認したい項目は分刻みでダッシュボードを更新しているデータもあって、事業がいまどういう状況になっているのかをなるべく正確に把握できるようになっています。」(吉永さん)

マーケティングというと、新規ユーザーがターゲットとなるケースが多いですが、一度離脱した人たちが復帰ユーザーとなって戻ってくるということもあります。これをきちんと把握するために、新規ユーザーのKPIと復帰ユーザーのKPIをそれぞれわけて可視化する必要があります。

「マーケティングの効果は復帰ユーザーにも影響しているはずなので、新規ユーザーだけで効果測定をするのではなく、復帰ユーザーへの影響度合いも見るようにしています。」(吉永さん)

プレイ初日で見えるユーザーのLTV

ルーデルでは、こうしたダッシュボードの可視化を基本と位置付けつつ、機械学習を用いたデータ分析も行っているといいます。
一例として挙げられたのは「新規ユーザーのLTV予測」。これは新規ユーザーの初日の行動ログを分析することによって、半年後、1年後のLTVを予測しようというものです。 

「そのお客様が初日にどれだけゲームをプレイしたか、課金をしてくれたか、これを機械学習のモデルに解析させて積み上げていった結果、ほぼ正確なLTVが予測できるようになりました」(吉永さん)

LTVが予測できるのならば、あとはいかにしてその母数を増やすか。ここで大切になってくるのがユーザーの定着化です。

「チュートリアルの段階でどれだけの人が突破して、どれだけ離脱者が出るかなども日次単位で可視化しています。一般的にはだんだんと数が落ちていくのですが、見ていると離脱者が一気に増加する瞬間があったりします。ゲーム画面から実際に確認してみると、ローディングが長すぎたり、負荷がかかって端末によってはゲームが落ちてしまったり、ゲームが難しくなって迷子になってしまうなど、何かしらの問題が発生していることがあります。このように課題が見つかったところはちゃんと改善して離脱の穴を塞いでいく。そうすることで定着率を上げていくことができます」(吉永さん)

定着率を上げるためのデータ分析と改善

データ分析では基礎集計による分析が基本ですが、それだけだとユーザー理解にも限界があるため、より解像度をあげるために機械学習をデータ分析に活用することもあります。ここでは決定木分析という手法を事例として、新規ユーザーの離脱要因分析を紹介しています。課題に対して機械学習モデルが高速計算を行うことで、ユーザーセグメントをより細分化し、ユーザー体験としてどこに課題があるのかを特定することができます。ここでは新規ユーザーの初日の行動を決定木分析で細分化し、具体的にどこに課題がありそうで、どのような仮説や改善施策が考えられるかの事例が紹介されていました。 

「分析の基本は基礎集計ですが、より詳細にユーザー理解をするとなると、それ相応にユーザーのセグメントも分岐することになります。例えば、チュートリアルをクリアして、初回のプレゼントを受け取って、最初のプレイで離脱する人と、初回のプレゼントを受け取らずに最初のプレイで離脱する人では離脱要因も異なる可能性があります。ユーザー定着の上流になればなるほど、小さな穴でも長期で見ると改善効果は大きかったりするので、より細かく課題を見つけに行くことが重要だと考えています。」(吉永さん) 

このようにサービスの課題を特定し、改善していくことによって費用対効果の最大化をはかっていく。同時にユーザーにとっても満足度の高いゲームへと成長していく。吉永さんのお話からはアプリマーケティングにおけるデータサイエンスの重要性があらためて理解できます。佐藤氏からも「非常に機械的かつ定量的にデータ分析を行いながら、定性的なユーザーの感情を動かすというチャレンジをしているのがすごいですね」という評価を受けました。

「次にステップとして、いま注目しているのはやはり生成AIです。生成AIを事業運営やマーケティングにどう活用していくか、これはデータサイエンティストとしての私のミッションのひとつです。これからはデータ分析にプラスして生成AIを活用したサービスの提供にも取り組んでいきたいと考えています」(吉永さん)

まとめ

ダウンロード数600万を超える大人気ゲームアプリ『ブルーロックPWC』。圧倒的な人気の裏側にあったのは、できる部分はすべて数値化するという徹底したデータ分析とそれに基づく仮説検証、改善施策の立案と実行でした。このセッションを通じ、アプリマーケティングにおけるデータ分析の重要性を再認識した人も多かったのではないでしょうか。

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EDITOR / HIROKI TAKAHASHI

1982年生まれ、金融経済新聞社にて編集記者として記事執筆やラジオNIKKEIでのマーケットアドバイザー業務などを経験。その後、コンサルティングファームにて経験を積んだのちに独立。2023年、レアゾンホールディングスにジョイン。

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