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2024.04.09
PROJECT STORY

米国最大の大学ハッカソン『TreeHacks2024』で最優秀賞受賞

意欲あふれる米国の学生を魅了した オープンソース遠隔操作ロボットシステム『ReazonChops』

ソフトウェアの開発者が集まって、限られた時間の中で新しいサービスやソフトウェアなどを創り出すイベント、それがハッカソン(※)です。 ※hack(ハック=プログラミングやシステム開発)とmarathon(マラソン)を組み合わせたIT業界用語。 レアゾン・ヒューマンインタラクション研究所は、2024年2月16〜18日にスタンフォード大学の主催で開かれた『TreeHacks2024』をスポンサード。約350チームが競い合うこの米国最大の大学ハッカソンにおいて、同研究所が開発したオープンソース遠隔操作ロボットシステム『ReazonChops』を活用したプロジェクトが最優秀賞を受賞しました。 『TreeHacks2024』にスポンサーとして参加した目的やそこで得られた成果について、レアゾン・ヒューマンインタラクション研究所所長の森大二郎さんと、現地担当者として活動した山本泰豊さんにお話を伺いました。

森大二郎 もり だいじろう 株式会社レアゾン・ホールディングス 取締役

九州芸術工科大学音響設計学科卒業。日本電信電話株式会社ヒューマンインターフェース研究所で情報検索技術の研究開発に従事。有限会社未来検索ブラジルで全文検索ソフトウェアを開発。株式会社レアゾン・ホールディングスでヒューマンインタラクション研究所を設立。

山本泰豊 やまもと ひろと 株式会社レアゾン・ホールディングス

スタンフォード大学コンピュータサイエンス専攻。産業技術総合研究所ニューロテクノロジー研究グループで脳と機械を直結するBCI技術の研究開発に従事。株式会社レアゾン・ホールディングスR&D部門でエイジテックプロダクトの開発を担当。

優秀な学生たちに企業としてのプレゼンスを高める

高橋

スタンフォード大学が主催する『TreeHacks2024』は、スタンフォードの学生をはじめ、世界10数カ国から工科系の優秀な学生が集まるハッカソンです。レアゾン・ヒューマンインタラクション研究所が『TreeHacks2024』のスポンサーになった理由について教えてください。

山本

レアゾン・ヒューマンインタラクション研究所では、2024年の6〜8月にかけて、米国などの海外から参加者を招いて、約10週間にわたるインキュベーションプログラムを開催する予定となっています。そこで募集に先立ち、米国最大の大学ハッカソンである『TreeHacks2024』にスポンサーとして参加することにしました。スポンサー企業になれば、会場内にブースを設置して企業のPRができるだけでなく、自分たちが研究開発している製品やサービスをハッカソンで利用してもらえます。スタンフォード生をはじめとする工科系の優秀な学生たちの間でプレゼンスを高めることができれば、プログラムへの応募者も増えるだろうと、そういう思いから参加しました。

プレゼンスを高めるには、やはりロボットのように、参加者が実際に手にすることができ、かつインタラクティブなものを持って行った方がいいだろうと判断し、開発して間もない『ReazonChops』のロボットアームを展示することに決めました。時間的には参加を決めてから1ヶ月もなかったので、研究員みんなで休日も返上して3台のロボットアームを完成させました。

山本

ハッカソンの前に自分たちでハッカソンをやったような感じでしたね。

ロボットアームのデモで注目を集めたレアゾンのブース

高橋

『TreeHacks2024』は参加した学生たちがその場でチームを組んで、36時間以内に自分たちの思いついたプロジェクトを進めていくというハッカソンですね。具体的にはどんな感じでイベントが行われるのでしょうか。

山本

参加者の半数はスタンフォードの学部生で、他は審査に合格した海外を含む他大生が集まってきます。今回参加者数は約1100人で、約350のチームがヘルスケア、サステナビリティ、ブロックチェーン&セキュリティ、教育、エンターテイメントの5つの分野でプロジェクトを競いあいました。
会場にはこれらのテーマに関連する各企業(スポンサー)のブースがたくさんあって、学生たちは最初の数時間はそこをまわって自分がなにをやりたいかを考え、チームを組みます。もともと友人同士で組んでいる人たちもいますが、ブースで隣り合った者同士で言葉を交わして即興でチームをつくるということも珍しくありません。
そうやってチームを組んだら、スポンサー企業の製品やサービスを利用して新たなプロジェクトを生み出していく、という流れです。企業はハッカソンそのものの賞とは別に各社とも企業賞というものを用意していて、優秀なチームに賞を与えることになっています。

高橋

ブースでは『ReazonChops』によるデモンストレーションが行われたのですね。

山本

日本からお菓子を持って行って、『ReazonChops』のロボットアームでそれをレアゾンのオリジナルトートバッグに入れて渡すというデモを行いました。おかげさまで大盛況で、お菓子もトートバッグも初日ですべてなくなってしまいました。他にもレアゾンが事業でコラボしているアニメのグッズなどを展示したので、学生からは「この会社はなんなんだろう」と興味を持ってもらえました。

意欲的だったチーム「Baymax」の学生たち

高橋

そうして集まった参加者のなかに、今回、最優秀賞を受賞した「Baymax」の学生たちもいたんですね。

山本

そうです。今回は参加が決定したのが急だったこともあり、ロボットアームはデモ用の2台の他に予備を1台しか用意できず、基本的にはよほど求められない限りは貸し出しはしないという方向性でいました。そうしたら、「Baymax」の4人組が「このアームって予備はありますか?」と聞いてきたんです。「もし貸してもらえるなら、こんなプロジェクトをやりたい」と話してくれたチームはいくつかありましが、そのうちの一つが、「ロボットアームにそれを指示した人間の口まで薬を選んで運ばせる」といった今回のプロジェクトでした。見た目にもわかりやすいサービスですし、彼ら自身がすごく意欲的だったので予備のロボットアームを貸し出すことにしました。メンバーは最初は4人でしたが、「この領域なら得意な友達がいるから」という感じで仲間を呼んで、最終的には6人で作業していました。結果、最優秀賞を受賞したというわけです。

高橋

「Baymax」というチーム名、プロジェクト名は映画の『ベイマックス(英題: Big Hero 6』からとったのですか。

山本

そうです。『ベイマックス』の主人公の名前は「ヒロ」といいます。私の本名は「ヒロト」ですが、アメリカでは「ヒロ」と呼ばれることが多いんです。そこで「同じ名前だね」ということで「Baymax」に決まりました。

高橋

今回、「Baymax」が開発したのは自動で動くタイプのプログラムですね。

『ReazonChops』は基本的には、アームAで人が動かしたのと同じ動作を離れた場所でアームBが再現するといったロボットアームです。ただ今回は貸し出せるアームが1台ということもあって、「Baymax」は自律制御のものを作りました。私たちも将来的な構想として、自律制御を実現したいと考えていたのですが、彼らはいきなり自律制御システムを実現してみせました。

高橋

具体的にはどんなモデルなのでしょうか。

例えば、難病などで体の自由がきかなくなった人が、ロボットに「そこにあるピンク色の薬をとって飲ませてください」と頼むとします。するとロボットはその音声を認識して言語モデルに解釈させて依頼主の要望を理解します。そして自分に搭載されているカメラでテーブルの上にあるピンク色の薬を認識して、それをつかんで相手の口まで持って行って口腔内に落とすという動きをします。人間なら簡単にできることですが、ロボットに自分で判断させて動かすのは至難の技です。『ReazonChops』のロボットアームには関節が8つあって、自動で物をつかんで運ぶにはその関節のひとつひとつをどれだけの角度で曲げるのか、軌道計算をしなければなりません。逆運動学というのですが、この数学を解くだけでもすごく大変なんです。それを彼らは短時間でやってのけたのだから、すごいなと思います。

山本

実際の作業でも、「Baymax」のメンバーはレアゾンのブースのすぐ2メートルくらい前に机を運んできて、そこを拠点としていましたね。なにか疑問点があるとすぐに「これ、どうやったらできますか」と質問にきてくれるんです。こちらの説明に対して飲み込みがはやいのにも驚かされました。

夜中にオンラインミーティングのコールがあって、いろいろ質問を受けたりもしました。実は彼らの持っているパソコンだと『ReazonChops』のカメラを動かすのが難しかったりもしたのですが、代替案を出すとすぐにそれを飲み込んで形にしてみせてくれました。優秀な若者たちに出会えて、こちらとしても嬉しかったですね。

まさかの最優秀賞受賞

高橋

「Baymax」はレアゾンの企業賞を獲得しただけでなく、『TreeHacks2024』全体の最優秀賞である「Moonshot Grand Prize」にも輝きました。

発表されたときはさすがに驚きました。数百チームあるなかでの最優秀賞だなんて、いくらなんでもできすぎではないかと。

高橋

受賞したということは高い評価を受けたということですが、どんな点が評価されたと思われますか。

チームのメンバーもみんな本当に優秀で、企業がほしいと思うような人材でした。

山本

これが縁となって、「Baymax」のメンバーには当研究所が夏に行う10週間のプログラムにも参加してもらうことになりました。プログラムでは今回のプロジェクトをさらにブラッシュアップさせようという話になっています。

高橋

『TreeHacks2024』にスポンサーとして参加した当初の目的が果たされたのですね。他にも応募者はいたのですか。

山本

募集をかけたところ、約430人の応募がありました。『TreeHacks2024』は学部生が中心のイベントなので学部生の応募を予想していたのですが、3分の1くらいは修士以上の人たちでした。この夏のプログラムでは、ここから選出した10人の方と一緒に、秋葉原にある当研究所の新拠点で一緒に研究開発を進めることになっています。

4月には、スタンフォード大学とライバル校のUCバークレー(カリフォルニア大学バークレー校)が共同で主催するトランプのポーカートーナメントにも『ReazonChops』のロボットアームを持って行って、デモンストレーションを行う予定でいます。

山本

アメリカの大学ではポーカークラブの部活動が盛んで、とくに工学系の大学だと企業のスポンサーがつくんですね。2月の『TreeHacks2024』では簡易的なアームのデモだけでしたが、今回の4月の大会では現在開発している遠隔操作型の双腕ロボットアームを持ち込んで、フードやドリンクの配膳といったサービスを行うことになっています。前回以上に見る人にインパクトを与えることができるのではないかと期待しています。

高橋

左右2つのアームがあると、ずいぶん人間の手に近い感じになりますね。それともうひとつ、『ReazonChops』のロボットアームに特徴があるとしたら、先端部が2本指の箸型になっていることかと思います。箸型にしたメリットは何でしょうか。

人間の指がそうですが、物を食べるにしても文字を書くにしても指が2本あればかなり繊細な動きができるんですね。そこで『ReazonChops』では箸型を採用してみました。他社のロボットではまだ見たことがないし、開発者として単純におもしろいなという気持ちもありました。『TreeHacks2024』での「Baymax」もこの特徴を活用して「薬をつかんで運ぶ」というプロジェクトを実践してくれました。

R&Dの成果をオープンソースで社会に広めたい

高橋

『ReazonChops』は将来的には設計図をオープンソースにして公開する予定だとお聞きしています。

それを意識しています。オープンソースにするからには誰でも材料を揃えれば作れるものにしたいので、『TreeHacks2024』に持って行ったロボットアームも、現在開発中の双腕型のロボットアームも素材や部品に関しては比較的簡単に手に入るものを使っています。双腕型ロボットに付ける樹脂製の外装部品なども3Dプリンターがあれば作ることができます。遠隔操作の場合は、人間が操って動かす側のロボットアームは操りやすいようにサイズを小さめにするといったこともできます。
もちろん、それに適したプログラムを組めば、『TreeHacks2024』における「Baymax」のように自動で動かすことも可能です。『TreeHacks2024』に参加することで、『ReazonChops』の可能性がさらに広がったように感じています。

高橋

レアゾン・ヒューマンインタラクション研究所では、今回のロボットアームもそうですが、R&Dの成果をオープンソースで公開して社会に貢献するといった方向性でさまざまな研究開発を行なっています。『TreeHacks2024』のようなイベントに参加することで、どんどん世界に認知されていくように感じられます。

山本

『TreeHacks2024』のスポンサー企業のブースのなかには飾り気のない淡白なものもあったりしたのですが、そのなかでレアゾンのブースはゲームやアニメからロボットアームの展示まであったりして、参加者の関心を引いていました。そうした学生たちに「この会社ではこうしたゲーム事業などの収益をR&Dにまわしています」と説明すると、みんな「おもしろい会社だな」と興味を持ってくれていました。「Baymax」のメンバーはもちろん、こうした優秀な学生のなかからインターン生になってくれる人が現れたらいいですね。

夏のプログラムの応募者との面談の際も『TreeHacks2024』の話題はかなり出ましたし、企業としての好感度はかなり高かったのではないかと思います。ロボットアームにかかわらず、レアゾン・ヒューマンインタラクション研究所のR&Dに魅力を感じる人たちには、ぜひ仲間に加わっていただきたいと願っています。

レアゾンチョップスの実際の動きはこちらの動画から確認できます

まとめ

R&Dの成果をオープンソースで公開しているレアゾン・ヒューマンインタラクション研究所。同研究所をふくめ、レアゾン・ホールディングスでは同じ価値観を持つ多くの方々に仲間になってもらいたいと採用の門戸を開いています。ご興味のある方のコンタクトをお待ちしています。

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EDITOR / HIROKI TAKAHASHI

1982年生まれ、金融経済新聞社にて編集記者として記事執筆やラジオNIKKEIでのマーケットアドバイザー業務などを経験。その後、コンサルティングファームにて経験を積んだのちに独立。2023年、レアゾンホールディングスにジョイン。

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1982年生まれ、金融経済新聞社にて編集記者として記事執筆やラジオNIKKEIでのマーケットアドバイザー業務などを経験。その後、コンサルティングファームにて経験を積んだのちに独立。2023年、レアゾンホールディングスにジョイン。

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