トップエンジニアが注目する事業【GIFTech×伝統工芸】~AI/データサイエンスとレベニューシェアで挑む、次世代のモノ創り実装実験~

GIFTech事業は、今年4月に終了した『GIFTech2025春』に続き、2025年7月よりGIFTech2025秋となる新プロジェクト『GIFTech JAPAN NEXT CRAFT』を始動しました。これまでのGIFTechはハッカソン中心でしたが、今回は”伝統工芸×AI”をテーマに、社内のGIFTechチームに加えて公募で集まった外部メンバー4名での主導の下、日本の伝統工芸が抱える社会課題解決へ挑み、収益創出を目指す新規プロジェクトとなります。 具体的に、世界で需要が拡大する伝統工芸において、職人が抱える‟次に何を作るか”という根源的な課題を、創作~マーケティングまで一気通貫して支援するエージェントで解決し、試作コストとリスクを削減し、グローバル市場で成功する次世代工芸品を生み出すことを目的としたプロジェクトです。 今回は、このプロジェクトを成功させるべく、東京銀器の正統な担い手『日伸貴金属』、江戸時代から続く東京銀器の伝統を受け継ぐ、日伸貴金属の職人である上川 宗光 氏 にご協力いただきました。
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昭和52年生まれ。高校を卒業後、平成8年より父である二代目上川宗照に師事し、鍛金技法を学ぶ。後継者4人兄弟の次男。数々の職人技術を学びヘラ絞りによる加工を得意とし「自然」をテーマに作品を多く手がけ時代にあわせた伝統工芸品が注目されて高い評価を得ている。
プロジェクトスケジュール
本プロジェクトは下記スケジュールで実施。
・2025年6月:プロダクト設計(今回のユーザーとなる伝統工芸/職人探し、外部開発者募集)
・2025年7~10月頭:プロダクト開発
・2025年10月:プロダクト運用
・2025年11月7日~12月6日:クラウドファンディング/プロモーション
ここで、そもそもなぜ、今回伝統工芸品とAIを組み合わせることになったのか。今までのGIFTechとは毛色が異なる内容なので疑問を抱く方も多いと思いますので、その背景についてお話を伺いました。
今回伝統工芸と組んだ背景
GIFTechでは、“モノづくりを楽しむ才能”を活かせる環境作り、”社会課題×エンターテイメント”をテクノロジーで解決する、N1エンジニアリング(たった一人のためのプロダクト開発)”という軸を持っています。その中で、今回ご縁があって伝統工芸を扱うECサイトを運営している企業ーー『ITOSHIO様』と出会うことができ、『GIFTech JAPAN NEXT CRAFT』として、伝統工芸が確定しました。
ー GIFTechが伝統工芸を選んだ、戦略的な理由とは?
AI時代を迎え、グローバルで求められるエンジニアのスキルセットは大きく変わりつつあります。GIFTechは‟社会課題をテクノロジーで解決する”、‟才能が真に開花する環境を創る”というミッションを掲げています。しかし、その根底にある真の目的は、‟世界を本気で目指す強いテック人材(才能)が集まる場所”としてのブランドを確立することです。
そして私たちは、その目的を実現する最強の武器として、伝統工芸を救うことを選択しました。それは、Qiita記事(※1)で紹介したトップエンジニアたちとの対談で明らかになったように、AI時代のエンジニアは越境によって‟CRAFT(職人技)”を磨く必要があるからです。伝統工芸の職人たちこそが‟CRAFT”の原点であり、私たちエンジニアが目指すべき‟Craftsman(職人)”の姿を体現していると感じています。
後継者不足・市場との断絶という社会課題の解決と、エンジニア自身の‟Craftsman”への進化、そして‟世界を目指す強いテック人材”を惹きつけるブランド構築。この三つが同時に実現できることを考えた時に辿り着いたのが、伝統工芸です。
そして、東京銀器を扱う『日伸貴金属』様が、この挑戦に共に取り組んでくださいました。
日本特有のカルチャーを扱うということで今まで以上に大きな規模感を経験でき、GIFTechが前進していることを実感しています。このプロジェクトが成功し、日本の伝統工芸が今まで以上に世界へ広まってほしいと考えています。
(※1)Qiita記事:なぜ、今「CRAFT」なのか?https://qiita.com/GIFCat/items/
職人がアプリ銀器を作るまで
この挑戦には、社内エンジニア(佐藤)、データサイエンティスト(Anshika)、AI推進室(我田)だけでなく、モノ創りに情熱がある開発エンジニア・デザイナーを募集しました。そして集まったのは、メガベンチャー所属など、ハイレベルな‟強いテック人材”4名でした。
特筆すべきは、この4名がモノ創りを全力で楽しもうとプロジェクトの成功にコミットする形で参画してくれた点です。
これは、成果報酬型の新規事業に近いプロジェクト開発で、外部からも応募を募り、開発者もものづくりへ熱心に取り組むことができる体制を構築したことが起因しています。
さらに、このプロジェクトのストーリーが種となり、『ちょまど氏』『かずなり氏』『TECH WORLD代表・市川氏』『iwashi氏』など、トップレベルのエンジニアインフルエンサーとの対談・ネットワーク構築にも成功しました(Qiita記事参照)。
実際に職人さんへユーザーヒアリングを実施し、アイデアをプロトタイプに落とし込み、全6回によるヒアリングを重ねました。そして、AI駆動開発を実践し、約二週間おきに複数のプロトタイプを作成→ヒアリングというサイクルを回すことに成功しました。
開発で実際に使用したツールは『Claude Code』『Cursor』『Codex』となり、用途で使い分けたり精度が高い情報収集をすることで、臨機応変に切り替えて対応しました。また、実際に日本の伝統工芸に関心があり購入に至った海外の方々の声を集めるために、街頭インタビューを行ったり、世界に日本文化を発信する『JAPAN FES TOKYO』にも参加し『東京銀器』の魅力を伝え、出来るだけ多くの声を集めるために幅広く動きました。
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そのおかげで、無事に世界の需要に応える伝統工芸プロダクトデザインアプリ『東京銀器 日伸貴金属 上川宗光さん専用モデル』が完成しました。実際にこのアプリを職人さんに活用していただきながら、GIFTechオリジナル銀器 ー 『GIF Techcraft』を作っていただきました。現在完成したGIF Techcraftの銀器は、実際にクラウドファンディングに出していますので、是非ご覧ください。
(URL: https://itoshio.com/shops/show/oy4nk2sq)
ここからは、『GIFTech JAPAN NEXT CRAFT』の取り組みについて、GIFTechメンバー2名(佐藤さん・富田さん)と、今回AIを利用した開発がメインとなっており、アドバイザーとしてご協力いただいた社内のAI推進室で活躍されている我田さん、にお話を伺いました。
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佐藤 貴子
さとう たかこ
2022年にレアゾンへ入社。GIFTech事業のエンジニアとして、ハッカソンの運営や「AI comic 英単語 コミ単」の開発等を行う。今回のGIFTechプロジェクトでは開発責任者を務め、伝統工芸の職人向けAIエージェントを開発。領域を超えた取り組みを通じて「GIFTechなエンジニア」を目指している。
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富田 菜穂子
とみだ なほこ
2017年にレアゾンへ入社し、現在はプロダクト開発本部にて、自社サービスや新規事業におけるデザイン業務へ従事。今回のGIFTechプロジェクトでは、ブランドコンセプト設計およびビジュアルデザインを担当。
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我田 柚花
わがた ゆか
2024年にレアゾンへ新卒入社し、現在はゲーム事業部で、ユーザーデータ分析、AIエージェント開発、AI推進業務へ従事。今回のGIFTechプロジェクトでは、データ活用の方向性策定を担当。
進めていく中で苦労したことを教えてください
ー まずは全体PdM担当の佐藤さんより
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このプロジェクトが始動したと同時に、開発者目線では伝統工芸の職人さん向けアプリを作るにはどうしたら良いのか非常に悩みました。そのため、今までのN1エンジニアリングで培ったスキルを活かして丁寧なヒアリングを心がけたので、初回から身になるお話をたくさん伺うことができました。おかげで、デザイナーの方々を巻き込んでプロダクトへ落とし込む時の解像度が格段と上がりました。改めて、課題の理解・ヒアリング力・課題を言語化しビジュアル化する重要性を理解しました。
また、AIの精度のチューニングには一番苦労しました。プロダクトデザインをするアプリを作ったので、伝統工芸の技術を取り込んだ画像生成のチューニングや精度を上げるためのデータ集めは大変でしたし、これからも日々改善が必要です。すぐに見つかるようなデータでもなかったので、あらゆる手段を駆使しました。AIチューニングにおいては、昨年からモデル自体の精度が高くなり希望が見えてきたところもありますが、未知の領域への挑戦なので、終わりのない戦いだと思います。今後もクオリティを担保するために、常にアップデートしていく必要があると感じています。
そもそも伝統工芸という特性上、AIに対して難色を示す人も多いと思うので、本当に価値があるアプリを開発したということを知っていただきたいです。職人さんと密に連携を図りながら出来る限り繊細な技術をアプリへ落とし込み、いざ職人さんの手に渡った時にすんなりと受け入れてくれ、すぐに一人で使いこなしていただけた姿を見た時は本当に感動しました。一生懸命、職人さんが想いを込めて作り、きちんと心がこもっている商品であるということが伝わっていただけると嬉しいです。
ー お次は、デザイン担当の富田さんより

今回のプロジェクトでは、普段のビジュアル制作やWeb制作に加え、初めての展示・イベント関連の空間演出にも取り組みました。浅草の町おこし企画とのコラボレーションでは、関係者や外部との調整も重ねていく中で、展示場所が最終決定されるまで状況が流動的だったため、どの場所でも対応できるデザインを検討する必要がありました。また、情報が随時更新されるため、Webサイトの整理にも苦労しました。
このような中で、多くの関係者と協力しながら制作を進め、初めての展示・空間演出や複数タスクの並行制作に挑戦できたことは、個人としてだけではなく、プロジェクト全体にとっても貴重な体験であったと感じています。
ー 最後に、アドバイザーで入っていただいた我田さんより
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私はデータサイエンティストとして、このプロジェクトのデータ活用の方向性を整える役割を担いました。その中で私の最大の挑戦は、職人さんの“創りたい”という想いと、海外市場で“売れる”という現実を両立させるアイデアを出すために、AIにどのような情報を与えるかという点でした。
そのために、職人さんの技術や物語といった“内部のドメイン知識”と、海外レビューなどの“外部からのデータ”を収集しました。そして、検索拡張生成(RAG)を用いることでこれらの情報を単なるデータとしてではなく、文脈を持った“知識”としてAIが深く理解できるようにしました。
このアプリが実現したのは、その両方の知識から、新しいアイデアの源泉となる‟意味のある関連性”を見つけ出したことが理由だと考えています。職人さん自身のこだわりが、海外の意外なニーズと結びつくことで、「次はこんなものを作ってみよう」という創造的なひらめきが生まれます。職人さんの知恵と市場データが自然に融合し、新しい可能性が生まれることこそ、このプロダクトの最大の価値だと考えています。
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今までと違う『GIFTech JAPAN NEXT CRAFT』の見どころは?
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事業部として考えている見どころは、このプロジェクトが単なる伝統工芸支援ではなく、GIFTechのブランド価値を4つの側面で向上させている点です。
1. 採用力
‟強いテック人材”が自ら応募し、事業を創る体験を通じたレアゾンのファン化と、その活動のコミュニティへの拡散
2. 人脈
通常の採用活動では接触不可能なトップ人材との恒常的なコネクション確立・維持
- ちょまど氏、かずなり氏、市川氏、iwashi氏など、トップエンジニアインフルエンサーとのネットワーク構築
3. 技術力
AI時代のエンジニアが‟CRAFT(職人技)”を磨く、最高峰の実践フィールド
- 伝統工芸という特殊ドメインに適用するために最適化した画像生成技術・RAG構築などの、他では得られない学び
4. 事業創造力
一つのプロジェクトから、次の事業機会が連鎖的に生まれる成長モデル
- 浅草プロモーションでの実証実験が、新たな事業の種を育てている
ITやテクノロジーの力で伝統工芸品に対する世の中の捉え方を変えると同時に、GIFTech自体のブランド価値も飛躍的に向上させる――これが、今回のプロジェクトの真の見どころです。今までのGIFTechはハッカソンをベースとした取り組みが多かったのですが、今回は初手の設計から前回までとは全く異なります。
伝統工芸の市場は世界的に伸びている一方で、日本国内では縮小しているのが実態です。縮小している理由としては、‟後継者不足・高齢化”、‟デザイン性・企画力の不足”、“文化継承と革新のバランス”など様々な課題が挙げられます。また、世界ではデザイン性やトレンド対応力が高い傾向にありますが、日本では実用品というよりは芸術品と見なされることも多く、世界の市場との乖離が続いています。
そこで、日本伝統工芸において“高い品質を維持したまま実用性を意識した作品を作れるようにしたい”という想いが募り、『GIFTech JAPAN NEXT CRAFT』が始動しました。
次回以降の開催に向けて何か取り組んでいることはありますか?
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初めての試みであるクラウドファンディングでは、二種類の商品の製作が決定し、2026年1月には実物の商品が完成予定です。改めて、‟職人がAIを使いこなしデジタル上で創作した商品が実際に受け入れられ購入された”という事実は、革新的な取り組みだったのではないかと振り返ります。また、実際にPOPUPへ訪れたお客様の声を反映させ、新規商品の販売も検討しており、近日中に追加販売を行う予定です。
次回以降としては、実は、今回の第一弾プロジェクトに興味を持ってくれた他の伝統工芸士と出会うこともできました。伝統工芸×AIエージェントプロジェクト第二弾の可能性、伝統工芸に関するプロジェクトはその他にもまだまだ動きそうな予感がしていますね。
ただ、GIFTechはモノ創りを楽しむ才能を生かす環境です。伝統工芸だけではなく、社会課題に向き合い新しいゼロイチへのチャレンジは続けていきます。
そして私自身、いち開発者として最新の技術をインプットし、伝統工芸以外のジャンルにも対応できるようにあらゆる方面へアンテナを張る必要があると考えています。とにかくエンジニアが楽しくモノづくりをできる環境を提供し、改めてGIFTechが、モノづくりに対して全力で楽しんでいる場所だということを理解していただければと思います!
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顧客インサイトの理解がまちを動かした浅草プロモーション
最後に、実際にプロダクトを使用して作った伝統工芸品のプロモーションの様子をお届けします。このプロジェクトは、グローバル市場(越境EC)を見据えています。しかし、灯台下暗し――日本国内にすでに‟世界の人々”がいました。
私たちのプロジェクト紹介動画(※)『It's time for Japan to listen to the world voice』が、浅草の協会の方々の心を動かしました。インバウンドに取り組む浅草もまた、‟海外の方々の声を聞く=顧客インサイトを理解する”というスタンスを共有していたからです。
その結果、浅草エリア全体が、まちぐるみで協力体制を組んでくれました。この実績を見た複数の他企業がアライアンスを締結し、現在浅草モデルを全国の観光地へ展開するプロジェクトが決定しています。グローバル市場への入口として、日本全国の「世界の人々」にリーチする戦略です。一つのナラティブが、まちを動かし、企業を惹きつけ、全国展開へ。伝統工芸プロジェクトから、次の大きな事業が連鎖的に生まれる――これが、GIFTechの成長戦略です。
(※)プロジェクト紹介動画:https://www.youtube.com/watch?v=5iq7v8GL7jw
開催中のプロモーションの様子
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既に『GIFTech2026春』の準備も着々と進んでいます。次回も面白い取り組みを考えておりますので、お楽しみに!
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